9月15日くらいまで不在です

アクセライズサマー #1 無料の連載ネット小説・ライトノベル 3500字

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PCよりスマホの方が読みやすいと思います。

本来42文字の行を半分の21文字にしてるせいでちょっとズレてます。「──」がギザギザになってるのも仕様です。「!?」が横になってるのも仕様です(直せません。大文字にすると行がズレます)。

ルビの位置ズレは直せます。おかしな部分があればコメントください。直す努力はします。

あと、文庫版もいつかは出す予定なので、絶対に買ってね☆

0-1

 五百年前、人類は三つに分断された。
 一度は全てが繋がり、国境というものさえなくなった人類だったが、衰退していく劣悪な地上の環境が人類の繋がりを許さなかった。
 力のあるものは地上を独占し、弱者である人類は到底人が住むことのできない場所である海、あるいは空へと迫害されることになる……。

 本来ならば、迫害された人類はそこで終わりを迎えるはずだった。
 ……けれども人類は、我々が思う以上にしぶといらしい。

 過酷な環境を生き抜くために抗った人類は次第にその環境に適応していき、最終的に海に迫害された人類は海中を自在に移動する潜水の能力を得て、空に迫害された人類は空中を自在に移動する浮遊の能力を得る結果につながる。
 そして、残された地上を得るために殺し合いをつづけてきた人類は、争うことだけに特化した力を身に着けることとなったのだ……。
「あの地上に住む人類は悪魔だ」と、地上の人類を知る人々は口をそろえて言う。

 衰退していく地上に限界を感じた陸の人類は新しい住処を得るために海の人類と空の人類に攻撃を仕掛けた。
 それが東の陸と海を滅ぼし、深い悲しみを残した争い『東破戦争』。
 東破戦争は多くの犠牲者を出して十年前に終結するのだが、終戦を迎えて十年がたった今も、人々の中には深い憎しみが残っていた。
 それでも……、たとえ憎しみが残っていたとしても、前に進むためには我々は繋がらなければならないのだ。
 未来のために……、可能性のある子どもたちのために……。

0-2


「おい、海人! お前ホントに筆記以外はダメダメだな。今までどうやって生きてきたんだ?」
 小麦色に焼けた肌の大男が、水面に浮かぶオレを小ばかにするように言った。
 大男に対してオレは『できるもん!』って言い返してやりたかったけど、実際にオレは筆記以外がダメダメだから、なにも言い返すことができない。
「ちょっと先輩、ふざけてます? 推薦がかかってるんですからマジメにやってくださいよ」
 小麦色の大男を追って、海中から上がってきたもう一人の人物……。明るい髪の色をした青い瞳の女の子が、辛辣な言葉でオレに追い打ちをかける。
 別にオレは、ふざけた気持ちで試合に挑んでいるわけではなかったけれど、全く役に立っていないことに少し後ろめたさを感じていた。
「あ、ああ……、悪いな、七葉ななは
 謝罪の言葉を口にしてしまったが、七葉が『オレが役に立たないこと』を今更指摘したのはただのイジり目的だろう。……だってこの子とオレ、一緒に泳ぐ練習したんだもん! それに、ちょっと口元がニヤけてるしさ……。
 ……けどまあ、恐らく。…………いや、間違いなくコイツらと同じチームでなければオレはここまで勝ち上がってくることができなかっただろう。
「…………」オレは雲ひとつない空を見上げる。
 燦燦さんさんと降り注ぐ陽光の下で、オレたち三人は『潜水術』と呼ばれる特殊技術を用いて行われる新スポーツ『エンデュアスロン』の試合を行っていた。
 ーーとは言っても、オレは潜水をしていない。ぷかぷかと水面の上に浮かぶだけだ。
 まるで……そう、地上の人類がポイ捨てしたビニール袋のようにぷかぷかと……。
「わたしとユーゴが何とかするんで、先輩もがんばってください。できない人間にもやれることはあるはずですから!」
「……うん。ワカッタ」
 再び嫌味を言われるのは予想出来ていたけど、ぐさりと突き刺さる言葉の痛みに耐えられずに、オレは涙を少しだけこぼしてしまった。
 それでも不幸中の幸いか、二人に『オレが涙を流していること』は、海の水で濡れていたおかげで気づかれることはなかった。
 女の子にホントのことを言われて泣くなんて、かっこ悪くて仕方ない。
 でも、男の子だってたまには泣いてもいいはずだ。……だってつらいもん。生きるのってつらいね。

「ユーゴ・海人・七葉チーム、三ポイント獲得です! 流石は推薦最有力候補ですね!」
「ええ、見事なチームワークです。海人くんが海上から二人に作戦を送っているんでしょう」
「作戦ですか! 海人くんはポイント獲得のために動いていないように見えましたが、やはりあれは高度な作戦指示だったんですね!」
 スピーカーを通して解説っぽい声が聞こえてくるけど、全然違うよ。
 オレはただ浮かんでるだけだから! 同じ学校の生徒に聞かれたら恥ずかしくて死にたくなっちゃうからやめて!

 ーー半年前、空の人類である『カエルマ』と、海の人類である『マーレン』が和平を結んだ。
 そして、和平を結ぶ際に発案されたのが、海と空を結ぶ新競技『エンデュアスロン』の開催と、両人類の優秀な学生たちを集めた『国立空海共同寄宿学校』の設立だった。
 オレとユーゴと七葉は同じ学校の生徒で、国立空海共同寄宿学校……通称『空海寄宿』の推薦枠を狙っている。今日はその推薦枠をかけたエンデュアスロンの試合ってわけだ。
 ……試合。とは言っても、浮遊術を学んでいないオレたちが行っているこのエンデュアスロンは、マーレン用に調整された特殊形式のルールが用いられている。
 本来の試合と同じルールで試合が行われていたのなら、オレは今以上にお荷物だったかもしれないな……。
「おおっと! ユーゴ・海人・七葉チーム、再び三ポイント獲得です! これは流石に勝負ありましたね」
「はい、そうですね。筆記の成績を加味してみても、三名が推薦枠を獲得したのは間違いないでしょう」
 どうやら勝負が決したようだ。
 腕に巻かれた試合用のヘイローに表示されている点数は15対3。解説の言う通り、ここから逆転されることはありえないだろう。
 オレは長時間潜水することができないから、試合後半は完全にお荷物だったんだけど、流石は優秀な二人だ。
 ハンデを抱えた状態でここまでの結果を出せるとは……。
「ははは」気が抜けて乾いた笑いがこぼれ出る。
 なんとか推薦枠を獲得できそうだ。これで七葉に恨まれずにすむよ。
 もし仮にこれで試合に負けでもしていたら……、二人には一生恨まれていたかもしれないな。
 ……それに…………。

 …………じじい。

「とったどぉおおおおお! ーーいてっ」
「お前は何もやってないだろ」
 海中から現れたユーゴに頭を殴られた。
 今時ツッコミを握りこぶしでやる奴って残ってたんだな。お前、それは最悪少年院送りにされる危険な行為だぞ?
「先輩! やりましたね! ……ああ、先輩は何もやってないんでしたか」
「うん。ナニモヤッテナイネ」
 あまりにも無慈悲な言葉を喰らったせいでオレのハートはボロボロだけど、七葉の笑顔が見れたからオレはうれしいよ。でも、もう少し優しい言葉をかけてくれてもいいんじゃないかな?
「ったく……。おい、海人!」
 今にも泣き出しそうなオレに対して、ユーゴが声をかけた。
 まっすぐにオレの顔を、この海と同じ群青の色をした瞳で見つめている。
「ん?」
 まっすぐに……、まっすぐに腕……を、オレの方に突き立ててきた……だと!? 殴る気か?
 おう。やめとけ。お前じゃオレに勝てねぇぞ!?
 オレはファイティングポーズをとって、ユーゴにケンカの意志を表明する。海の中というハンデがあったとしても、オレがユーゴにケンカで負けることはないだろう。
「えい!」
 唐突に、横で浮かんでいた七葉がユーゴの拳に拳を当てた。……どうしちゃったの!?
「これってフィストバンプってやつですよね! わたしもやってみたかったんです」
「おい七葉、これは男同士の挨拶なんだよ。あとな、黙ってやるからカッコイイんだよ。騒いでやるもんじゃねぇだろ? クールじゃねぇ」
 ……フィスト……なに? 殴ろうとしてきたわけじゃないのか? ああ、そうなのね。試合中役に立たなかったオレに制裁を加えようとしていたわけじゃないのね。
 親友に嫌われちゃったのかと思って気構えていたけど、安心したよ。
「ユーゴ! 七葉!」オレは声を上げた。そして、なんだかよく分からないけどオレは、二人の拳に拳を合わせる。
 確かに、やってみるとこの挨拶はカッコイイ気がするな。あと、疑って悪かったな、ユーゴ。
「……」二人がオレと向かい合って、目を合わせる。考えていることはきっと、一緒だろうな。
 今まで短いようで長い戦いだった。でも、これはまだ始まりに過ぎないんだ。
「ーー次はーー世界だーー!」
 オレは高らかに宣言した。東西南北、ありとあらゆる地域に住まう海と空、二つの人類の優秀な学生たちが集められる学校、国際空海共同寄宿学校と、空と海の技術が混じりあった、本当のエンデュアスロンへの挑戦を!


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