アクセライズサマー #1 無料の連載ネット小説・ライトノベル 7000字

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PCよりスマホの方が読みやすいと思います。

本来42文字の行を半分の21文字にしてるせいでちょっとズレてて、読みにくくなってます。「──」がギザギザになってるのも仕様です。「!?」が横になってるのも仕様です(直せません。大文字にすると行がズレます)。

ルビの位置ズレは直せます。おかしな部分があればコメントください。直す努力はします。

あと、文庫版もいつかは出す予定なので、絶対に買ってね☆

ーー ←コピペ用

更新停止中。1巻が発売されたら再開予定。

0-1 ???

 五百年前、人類は三つに分断された。
 一度は全てが繋がり、国境というものさえなくなった人類だったが、衰退していく劣悪な地上の環境が、人類の繋がりを許さなかった。
 力のあるものは地上を独占し、弱者である人類は、到底人が住むことのできない場所である海、あるいは空へと迫害されることになる……。

 本来ならば、迫害された人類は、そこで終わりを迎えるはずだった。
 ……けれども人類は、我々が思う以上にしぶといらしい。

 過酷な環境を生き抜くために抗った人類は、次第にその環境に適応していき、最終的に海へと迫害された人類は、『海中を自在に移動する潜水の能力』を得て、空に迫害された人類は、『空中を自在に移動する浮遊の能力』を得る結果につながった。
 そして、残された地上を得るために殺し合いをつづけてきた人類は、『争うことだけに特化した能力』を身に着けることとなったのだ……。
「あの地上に住む人類は悪魔だ」と、地上の人類を知る人々は口をそろえて言う。

 衰退していく地上に限界を感じた陸の人類は、新しい住処を得るために、海の人類と空の人類に攻撃を仕掛けた。
 それが、東の陸と海を滅ぼし、深い悲しみを残した争い、『東破戦争』。

 東破戦争は多くの犠牲者を出して、十年前に終結を迎えたのだが、終戦から十年のときがたった今も、人々の中には深い憎しみが残っていた……。

 それでも……。たとえ憎しみが残っていたとしても、前に進むためには、我々は繋がらなければならないのだ。
 未来のために……、可能性のある子どもたちのために……。

0-2 海人

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「おい、海人! お前、ホントに筆記以外はダメダメだな。今までどうやって生きてきたんだ?」
 小麦色に焼けた肌の大男が、水面に浮かぶオレを小ばかにするように言った。
 オレは大男に対して、『できるもん!』って言い返してやりたかったのだけれど、実際にオレは筆記以外がダメダメだから、コイツに対してなにも言い返してやることができない。
「ちょっと先輩、ふざけてます? 推薦がかかってるんですからマジメにやってくださいよ」
 小麦色の肌をした大男を追って、海中から上がってきたもう一人の人物……。明るい髪の色をした青い瞳の女の子が、辛辣な言葉でオレに追い打ちをかけた。
「うぅ……」
 オレは当然、ふざけた気持ちで試合に挑んでいるわけではなかったのだけれど、試合に全く役に立っていないことに対しての後ろめたさは、痛いほど感じていた。……そして、目の前にいる女の子の言葉が、ぐさりと胸に突き刺さって、目の奥が締め付けられるような感覚に陥る。
「あ、ああ……、悪いな、七葉ななは
 胸の痛みと罪悪感。それと、情けなさによって生み出された、深い自己嫌悪の感覚と悲しみに流されて、オレはつい、謝罪の言葉を口にしてしまう。
「…………」
 ……けれども、少し冷静になって考えてみると七葉が、『オレが役に立たないこと』を今更指摘したのは、ただ単に『オレをバカにしたかっただけ』だということに気が付いた。
 だってこの子とオレ、何度も一緒に泳ぐ練習をしたんだもん! それに、よく見るとちょっと口元がニヤけてるしさ。
「はぁ……」と、オレは七葉の意地の悪さに呆れて、ため息をついて、そんな『いじりの意図』にさえ気づけない己の愚かさに、一段と頭を抱えた。
「ふふ」
 七葉は頭を抱えているオレの考えすらも把握したのか、小さな悪魔のように笑みをこぼす。
 当然、そんな七葉の姿を見てオレの頭の中には、『謝るんじゃなかったかな』という考えがよぎったのだけれど。
 まあ、実際にオレは二人にとっての『お荷物』だっただろうし、迷惑だって数えきれないほどかけてきたからな……。
 ……それに恐らく。いや、間違いなくオレは、コイツらと同じチームでなければ、ここまで勝ち上がってくることはできなかったはずなんだ。
「…………」
 オレは、過去に行ってきた練習や、試合を思い出して、青く透き通った海の上に浮かびながら、雲ひとつない空を見上げてみた。.
「今まで色々あったけれど、この試合でもう最後。……か」
 燦燦さんさんと降り注ぐ陽光に照らされた、広い大海の青の中で、オレたち三人は『潜水術』と呼ばれる青海人特有の能力を用いて行われる新スポーツ、『エンデュアスロン』の試合を行っていた。
 学校の推薦を得るために参加したこのトーナメントの試合も、潜水術のトレーニングもいつも過酷でつらかったけれど、決勝までたどり着くことができたのなら、努力が報われた気がして、悪い気はしなかった。
 ……とは言ってもまあ、実際のオレは潜水をしていないし、ぷかぷかと水面の上に浮かんでいるだけなんだけどな。
 まるで、……そう。地上の人類がポイ捨てしたビニール袋のように、ぷかぷかと浮かんでいるだけだ。
「ーーっていうわけですけど、聞いてましたか? 先輩」
「え?」
「はぁ……。やっぱり聞いてなかったんですか。ユニークな先輩らしくて良いですね」
 七葉がため息をわざとらしくついて、オレに皮肉の言葉を浴びせてくる。
 ……けれども、なんとなく七葉のその言葉が、いつもよりトゲのない、温かみのある言葉に感じられたから。皮肉というのはオレの被害妄想で、実際の七葉は、本心でオレを褒めてくれていたのかもしれない。……と、そう思えた。
 七葉の発した言葉の、本当の意図は分からないけれど。まあ、とりあえず感謝はしておこう。
「ああ、ありがとうな。七葉」
「……? 別に褒めてないですよ。皮肉が通じないほどバカになったんですか?」
「えっ!?」……え? ひどくない?
 オレの想像は勝手な妄想で、目の前にいる七葉は、本当にいつも通りの七葉だった。
 勝手にオレが七葉に優しさを期待しただけで、七葉の態度は平常運転だったのだろうけれど、なんだか凄く裏切られた気分だ。
「全く、仕方ないですね。……ユーゴ。私の代わりにこのバカな先輩に教えてあげてください。どうやら私と先輩のIQが20程度離れているようなので、私では話が通じません」
「ああ、分かった。俺が言えばいいんだな。ーーってそれ、間接的に俺もバカにしてないか?」
「ははは」
 七葉が楽しそうに笑っている。
 凄く気持ちのいい笑いで悪い気はしないけれど、バカにしてることは否定しないんだな。
「ーーっと、いけないですね。三人で固まってるのは危険ですので。……ユーゴ。できる限り早く、先輩に説明をお願いします」
「ああ……うん。そうだな」
 ユーゴは七葉に皮肉を言われて、しゅんとしていたのだけれど、ヒッターのオレらはともかく、キャッチャーの七葉が同じ場所にとどまっているのは、実際によくないことだからな。
「はぁ……」と、オレと同じように、その事を思い出したであろうユーゴは、気持ちを切り替えるために、息を吐き出して、いつも通りのクールぶっている雰囲気に戻って、オレの顔をじっと見つめながら、口を開いて言った。
「海人、お前の役割が決まった。心して聞け」
「役割?」
 ユーゴは凄く真剣な表情で、オレの方向を向いている。いつも以上に真面目な雰囲気を醸し出していて、なんだか凄く、『ただ事ではない』という感じだ。
 そんなユーゴの、真剣な雰囲気に当てられてオレは、「ごくり」と生唾を飲み込む。
「…………」
 ユーゴの言う『オレの役割』と言うのは一体、なんなんだ!?
 まるで汗のように、濡れたオレの髪から海水が、額を伝って水面にこぼれ落ちた。
「…………」
「…………」
「お前は……」
 沈黙の後に。ユーゴは口を開いて言う。
「お前は……。窓際族だ!」
「窓際族!?」
 それって確か……。
「窓際族って言ったらあの、会社で全く必要とされていないけれど、給料だけは異常に貰える『なりたい役職ランキング一位』の、あの窓際族か!?」
「そうだ。その窓際族だ」
「それってつまり……」
「…………」
「おい! なんとか言ってくれよ!」
 ユーゴは無言の無表情で、オレの顔をただただ、じっと見つめていた。
 本気でオレは心を躍らせて、期待して待っていたっていうのに、この仕打ちかよ!
 せっかく二人の役に立てると思ったのに。窓際族なんて、ただの……。ただのニートじゃないか! くそぉっ! つまりオレは、戦力にすらならないってことか!?
 オレは本当に、本当に二人の役に立ちたいと思っているのに!
「とにかく。私とユーゴが全部なんとかするので、先輩は相手の動きでも窺っていてください。全く役に立たない先輩でも多少は、相手にプレッシャーを与えられると思いますので」
「ああ、……うん。そうだね」
 つら……。
 再び七葉に嫌味を言われることは、容易に予測することができていたけれど、「全く役に立たない」という言葉は、オレの心を無慈悲にも抉り取った。
「うぅ……」分かっていても、つらいものはつらい。……あ、涙が。
「安心しろ、海人。俺と七葉だけでこの試合は十分とれる」
「そうですよ。前半でだいぶリードしましたからね。ごくつぶしの先輩がいたとしても、十中八九勝てる試合です」
「……うん」追い打ちをかけるのはやめて。
 七葉の言葉を受けて、ポロポロと涙がこぼれ出てきたけれど。不幸中の幸いか、二人に『オレが涙を流していること』は、海の水で濡れていたおかげで、気づかれることはなかった。
「じゃあ、行ってきますね!」
「ああ……。うん、頑張れよ、七葉。それにユーゴも」
 海水を拭うふりをしてオレは、涙をぬぐった。
 女の子にホントのことを言われて泣くなんて、かっこ悪くて仕方ないから……。
 ……でも、男の子だって、たまには泣いてもいいはずだよね? だって、つらいものは、つらいんだから。
「…………」
「ユーゴ・海人・七葉チーム、3ポイント獲得です! 流石は推薦最有力のチームですね!」
「ええ、見事なチームワークです。恐らく、海人くんが海上で作戦を考えて、二人に指示を送っているんでしょう。それに、海人くんが海上にいることで、相手チームにプレッシャーをかけることもできますからね。素晴らしい戦術です」
「なるほど! 海人くんの知力を生かした高度な作戦だったんですね! 海人くんはポイント獲得のために動いていないように見えましたが。……納得です」
 ユーゴと七葉が下に潜ってから数分後。二人はさっそく、ポイントを取ってくれたようだ。
 そして、スピーカーを通して解説っぽい人たちの声が聞こえてきたけれども、オレに対する情報が、なんだか色々と間違っていた。
『オレはただ、水の上に浮かんでるだけだから! 同じ学校の生徒に聞かれたら恥ずかしくて死にたくなっちゃうからやめて!』と、頭の中に、羞恥心で死にそうなオレの、大きな叫び声が響く。
「はぁ……」
 本当は思うだけじゃなくて、解説の人たちに向かって口頭で強く、「それは違うぞ!」と否定したいんだけども。否定する方が恥ずかしいからな。はぁ……。
「……やっぱつらいわ」
 喉元に絡まっていたオレの思いは、弱音になって、オレの口から吐き出された。
「…………」
 でも、そうか。
 考えてみればオレたちは、いつの間にか、こんなところまで来ていたんだな。

 ーー半年前、空の人類である『カエルマ』と、海の人類である『マーレン』が和平を結んだ。
 そして、和平を結ぶ際に発案されたのが、海と空を結ぶ新競技『エンデュアスロン』の開催と、両人類の優秀な学生たちを集めた『国立空海共同寄宿学校』の設立だった。
 国立空海共同寄宿学校……通称『空海寄宿』は、最先端の技術を学べる魅力的な学校であり、他人類の技術を学べる唯一の学校でもあることから、入学の応募が殺到。
 定員数432人……、マーレンに限れば216人という小さな枠を勝ち取るためには、実績や推薦が必須となり、多くの地域で推薦をかけた試験や、疑似的なエンデュアスロンの試合が行われることとなった。
『疑似的な試合』というのは、浮遊術を習得していない青海人や、潜水術を習得していない赤空人たちに向けて調整された特殊形式の試合のことであり。基本的に今現在、全世界で行われているエンデュアスロンは、どれも、自人類の能力を図るために特化されたものにすぎない。
「……だからこそ、海上に浮かんでいてもペナルティを受けなくてすんでいるんだよな」
 もし仮に今、オレたちが参加しているエンデュアスロンの試合が本来のルールと同様のものであったのならば。オレは、今よりも二人のお荷物だったかもしれない。
「ユーゴ……。七葉……」二人にはいつも、頭が上がらないよ。
 空海寄宿の推薦が欲しくて、オレたち三人は試合を行ってきたけれど。ここまで勝ち上がってこれたのは全部、二人のおかげだ。
「…………」
「おおっと! ユーゴ・海人・七葉チーム、再び3ポイント獲得です! これは流石に勝負ありましたね」
「はい、そうですね。筆記の成績を加味してみても、三名が推薦枠を獲得したというのは間違いないでしょう」
 オレが過去を思い返している間に、どうやら勝負が決したようだ。
 腕に巻かれた最先端機器の『ヘイロー』に表示されている点数は15対3。解説の言う通り、ここから逆転されることは、まずありえないだろう。
 オレは長時間潜水することができないから、試合後半は完全にお荷物だったんだけど、流石は優秀な二人だ。ハンデを抱えた状態でここまでの結果を出せるとは……。
「ははは」気が抜けて、乾いた笑いがこぼれ出た。
 なんとか推薦枠を獲得できそうだ。これで七葉に恨まれずにすむよ。
 もし仮に、これで試合に負けでもしていたら、二人には一生恨まれていたかもしれなからな。
 ……それに。

『じじい』

「とったどぉおおおおお! ーーいてっ」
「お前は何もやってないだろ」
 海中から現れたユーゴに突然、頭部を殴りつけられた。
 別に、本気で殴られたというわけではないから、そこまで痛いというわけではないけれど。
「なにすんだよ、ユーゴ。痛いじゃねぇか!」
 今時ツッコミを握りこぶしでやるお前にはビックリしたよ。それは最悪少年院送りにされる危険な行為だからな? マジで気をつけた方がいいぞ? ……ったく。オレが寛容な人間で良かったな。
「…………」
「先輩……。先輩! やりましたね。優勝ですよ!」
「ああ、七葉。勝てて良かったな!」
 少し遅れて、七葉がオレたちの浮かんでいる海面に浮かんできた。
 常識知らずのユーゴと違って、七葉は凄く優くオレに接してくれるから、まるで天使のように見えるよ。……大好きだ。
「ああ、そういえば先輩は何もやってないんでしたね。ごめんなさい」
「うん。ナニモヤッテナイネ」前言撤回。
 ユーゴに殴られた頭をさするオレに、追い打ちをかけるかのように、七葉の辛辣な言葉が、オレの胸に突き刺さる。
「うぅ……」痛い。
 ナイフで刺されるよりも、銃で撃たれるよりも鋭い痛みだ。
「……苦しい」
 オレのハートはもう、ボロボロだけれど。……でも。
「ふふ」
 七葉の笑顔が見れたから、オレはうれしいよ。……うん。
 とはいえ、『もう少し優しい言葉をかけてくれてもいいんじゃないかな』とも思うけれどな。
「……おい、海人!」
 今にも泣き出しそうなオレの感情を無視するかのように、ユーゴが声をかけてきた。
 そして、まっすぐにオレの顔を、この海と同じ群青の色をした瞳で見つめている。
「ん?」なんだ?
 まっすぐに、まっすぐに。腕……を、オレの方に突き立ててきた……だと!? また殴る気か?
 おう。やめとけ。正面からオレに勝つことは、お前にはできねぇぞ!?
「ぐ」っとオレはファイティングポーズをとって、ユーゴにケンカの意志を表明した。
 たとえ海の中という大きなハンデがあったとしても、ユーゴがオレにケンカで勝てることは、万に一つもないだろう。
 残念だけれど……「かかってきな」。全力で返り討ちにしてやるぜ。
 オレはどんなケンカでも、売られたのなら全部買うからな。
「えい!」
「!?」
 ……どうしちゃったの!?
 唐突に、横の方に浮かんでいた七葉が、ユーゴの拳に拳を当てた。
「これってフィストバンプってやつですよね! 私もやってみたかったんです」
「おい七葉、これは男同士の挨拶なんだよ。あとな、黙ってやるからカッコイイんだよ。騒いでやるもんじゃねぇだろ? クールじゃねぇ」
 ……フィスト……なに? 殴ろうとしてきたわけじゃないのか? ああ、そうなのね。試合中に全く役に立たなかったオレに、制裁を加えようとしていたわけじゃないのね。
 親友に嫌われちゃったのかと思って気構えていたけど、安心したよ。
「はぁ……」と、オレは息を吐き出して、気持ちを切り替えることにした。
 よし!
「ユーゴ! 七葉!」
 オレは全力で、二人に向かって声を発した。
 そして、よく分からないままにオレは、二人の拳に拳を合わせる。
「…………」
 確かに、やってみるとこの挨拶は、なんだかカッコイイ気がするな。
 それと、疑って悪かったよ。ユーゴ。
「…………」二人がオレと向かい合って、まっすぐに目を合わせた。
 恐らく……。いや、間違いなく。考えていることはきっと、みんな一緒だろう。

「次は、世界だ!」
 オレたちの声が重なり、言葉が空と海に響き渡る。
 そして、オレたちはこれから挑戦していくんだ。東西南北、ありとあらゆる地域に住まう海と空、二つの人類の優秀な学生たちが集められる学校、国際空海共同寄宿学校と、空と海の技術が混じりあった、本当のエンデュアスロンへと!


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